「顎が痛くなる」「口が開かなくなる」「口を開くときに音がする」という顎関節症。こうした症状が起こる理由は、顎関節のどこに何が起きているかによってタイプが異なります。それらは、
①筋肉痛
②ねんざ
③クッションのずれ
④骨の変形
の4つに分けられるのです。自分の顎関節症がどういうタイプであるかを理解することが、治療と再発予防に近道になってくるのです。
まずは顎関節の仕組みです。
ここからはタイプ別にお話ししていきます。
①筋肉痛タイプ
耳の少し斜め上を押すと痛みますか?
このタイプは、顎関節を動かす筋肉の痛みが、顎の痛みと感じられたり、口を開けにくくするのです。他には、偏頭痛がする、頬がだるい、重い、頬が腫れぼったい、顔がゆがむ、などの症状です。口を動かしたり咀嚼をするのに重要な筋肉のどちらか、あるいは両方が緊張して炎症を起こし、張りやこりとなっていることを示します。症状の改善には、早期のうちに、筋肉をほぐすのが効果的であるため、筋肉マッサージや開口ストレッチ、筋肉の安静、生活習慣の見直しをし、放置はしないようにしましょう。歯科での治療は、マッサージやストレッチで効果が上がらない場合、筋肉を伸ばしリラックスさせるためにマウスピースを装着してもらいます。
②ねんざタイプ
耳の前、こめかみあたりを押すと痛みますか?
このタイプは、関節を包む組織に炎症が起きています。関節には、骨のほかに軟骨や靭帯、関節包といった組織があり、そうした組織に無理な力がかかり、痛めてしまうことを言います。その炎症を起こした組織から滲み出る潤滑油の滑りが悪くなったことで、炎症が増し、関節の動く範囲が小さくなって、関節がかたくなり、口が開かなくなるのです。症状の改善には、炎症が起きているわけですから、まずは安静にすることが大切です。痛みが治まったら、開口ストレッチを徐々に始めましょう。ストレッチをしないと、顎がかたまったままになってしまいます。このタイプも対処が早いほど、短い期間で治りやすいです。併せて生活習慣の見直しもしましょう。歯科の治療では、関節への負担を軽減するためにマウスピースを装着してもらいます。
③クッションのずれタイプ
このタイプにはさらに2パターンあり、
❶ポキポキパターン
・口を開けるときにカクッとかポキッと音がする。
・痛みがある場合とない場合がある。
❷引っかかりパターン
・口を開けようとしても引っかかったように開かない。
・大きく口を開けようとすると痛みがある。
に分けられます。正常な顎関節の場合、口を開けたとき、関節円板は常に下顎頭の上に乗っていて、口を開け閉めするときに下顎頭の動きに合わせて動くので、下顎窩と下顎頭が直接ぶつかるのを防ぐクッションのような働きをしています。しかし、このクッションが前の方にずれてしまうのがこのタイプです。
❶ポキポキパターン
口を大きく開けると、前の方にずれていた関節円板が下顎頭の上に戻ろうとします。そのとき、骨と骨の狭い隙間を通り抜けようとして音がします。
❷引っかかりパターン
口を開けようとしたとき、前の方にずれていた関節円板が下顎頭の上に戻れずに詰まって、顎の動きがそこで止まってしまうのです。口の開きが均等ではなくなり、悪い関節の方に下顎が歪むので、鏡で確認してみましょう。
❶、❷のどちらのパターンでも、ずれた関節円板が動くときに関節のなかで無理がかかると、痛みが出ます。しかし関節円板がずれていても、無理がかからなければ、痛みもなく、口もひらきます。
症状の改善には、痛みをとり、口を開けられるようにすることが目標となります。無理に関節円板を戻すのではなく、関節円板への無理な力を抑え、開口ストレッチと合わせて口を開くようにしていきます。ただし、❶の場合は、痛みがなく音が気になるだけなら経過観察をさせていただくことが多いです。❷の場合は、顎関節の内部の変化にともない、④骨の変形タイプに移行することもあるので、定期的な検査が大切になります。併せて生活習慣の見直しもしましょう。歯科の治療では、マウスピースを装着してもらいます。
そもそも関節円板がずれる原因として顎関節への異常な負担がずれにつながってくるのです。
④骨の変形タイプ
このタイプは、口を開けようとすると痛みがある、引っかかるような感じがする、顎の関節からザラザラと擦れるような音がする、などの症状です。下顎窩と下顎頭のあいだには、関節円板や、骨の表面を覆う軟膏があります。しかし、関節円板が前にずれ、さらに加齢などにより軟骨が薄くなると、下顎窩と下顎頭が直接当たるようになり、やがて骨が変形していきます。軟骨は女性ホルモンの影響を受けるので、ホルモンが少なくなり、軟骨が薄くなる中高年の方によく見られます。症状の改善には、痛みをとり、口を開けられるようにするために開口ストレッチ、関節の安静や、生活習慣の見直しもしていきましょう。骨の変形に要する期間は長いので経過観察も大切です。歯科の治療では、マウスピースを装着してもらいます。
①〜④のタイプについて分かっていただけたでしょうか。
次回は、全ての原因に繋がっている生活習慣から悪い癖を見直していきましょう。